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総合発注の問題点  現代の建物が昔に比べて随分立派になったことは冒頭で述べたとおりですが、その最大の原因は、従来の構造と意匠だけの建物に「健康と快適さ」という画期的な「設備システム」がプラスされるようになったからです。
 建物の本質的な変化にもかかわらず、旧態依然とした現状の施工体制(建築業者が設備システムを統括する)では、健康で快適な建物を完成させることは困難です。
おおかたの建築業者は、ともすれば設備という、技術の異なる分野に対し、理解が薄く、建築工事の方を設備工事よりも優先させがちになります。そのため、工程的にも機能的にも設備工事に無理が生じる恐れが出てきます。
 また、建築業者は元請という立場で、設備業者を常に下請けとして施工させているのが現状です。
 さらには、工事価格や代金の支払いにおいても、設備業者に不利な条件を強いる場合もしばしばあります。
 こうしたことから、設備業者が特性を生かして工事が出来るよう別個に受注することが必然的な最良の条件とされつつあります。

 前述のような問題点を解決するのが分離発注方式といわれるものです。これは、設備工事を建築工事から切り離し、設備業者に直接発注するという方式です。
 ビル建築の先進国アメリカでは、法律で分離発注を義務づけている州がニューヨーク州を筆頭に十州余もあります。分離発注こそ、本当に建築主の利益になる発注方式だということが見極められたからでしょう。
 日本でもほとんどの官公庁、公団、公社など、公共建築物の設備工事は従来から、品質・性能の維持・コスト低減・価格の透明性確保の見地から「分離発注」が基本であり、県を始め県内のほとんどの市や町においても分離発注がなされています。
 また、民間の大手不動産会社などでも、積極的に分離発注を採用し、それによってコストダウン、その他いろいろな面で合理化が図られたと発表している例がたくさんあります。
 国会で建設業法の改正が審議された際にも「設備工事は専門工事業者に分離発注するように努めること」という主旨の決議や、中央建設業審議会も建設大臣に対して同様の主旨の勧告、そして平成13年2月施行された「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」のガイドラインとしての「適正化指針」の中でも、公共工事においては分離発注が基本であるとの認識にたっています。
設備工事は分離発注で

分離発注のメリット 〜これからはアフターメンテナンスの時代〜
 設備は建造物であり、その工事は機器や器具などの一部を除いて建物の表面に現れない部分に納まっています。
 近年は改修工事も増え、建築工事の下で行った工事は、メンテナンススペースの不足から壁・天井など全てを壊さなければ施工出来ない建物も少なくありません。建築工事が優先されるため、メンテナンススペースがなく、配水管が詰まったり、壊れたバルブも交換できない等の問題が多々発生しています。地震発生後の緊急な場面でも、設備の修理や復旧が困難な建物も多く見受けられます。
 「建物は建ててしまえば終わりだが、設備はメンテが必要」と言われるように、建てた後も設備業者に修理の依頼や相談が多くあります。設備工事が分離発注であれば、建築業者を通さずに、実際に工事を行った業者と直接対話ができ、安値で迅速な修理が出来る次のようなメリットが得られます。
@グッド・コミュニケーション
 建築主と設備業者とが直結するので、設備についての希望を直接伝えることが出来ます。また設備業者から専門的な意見を充分に聞くことが出来ます。
Aハイ・クォリティ
 分離発注されると、設備業者は責任と誇りを持って工事が出来るうえに、先に述べたとおり、総合発注の弊害が除かれるので、無理なく良質の工事が期待できます。

Bコスト・ダウン

 設備業者に直接発注されるので、中間マージンが省けます。
 最近では設備工事費の建築工事中に占める割合は、非常に高くなって、40〜50%に達するものも少なくありません。しかも建築業者が設備業者から得ている中間マージンはかなりの金額です。
 言い替えれば、総合発注方式のために建築主はマージン負担をしているという訳です。
C親切でスピーディな アフターサービス
 設備は常時活動しているものですから、故障や事故も起こり易く、しかもそれに対しては正確で迅速な処理をしなければなりません。ところがそうしたアフターケアは建築業者がするものではありません。実際に工事を行った設備業者がするものです。
 建築主と設備業者とが直結していることがいかに大切か、お分かり頂けると思います。

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一般社団法人 静岡県設備協会